人口問題の正義論

人口問題の正義論
著者 松元 雅和
井上  彰
ジャンル 哲学・思想・宗教
出版年月日 2019/01/30
ISBN 9784790717256
判型・ページ数 A5・264ページ
定価 3,960円(本体3,600円)
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

人口の問題は正義の問題である!

どれくらいの人口規模が理想的なのか?
どのような人口政策が正しいのか?

哲学、倫理学、法哲学、政治哲学、経済学がそれぞれ進めてきた知の蓄積を結集して体系化した、最良のガイド。哲学的基礎から、生殖と家族計画、世代間正義、移民・外国人労働者問題まで。


◆序章より

本書の特徴は、人口問題を正義論の観点から論じることである。正義論とは、個人の選択や判断、社会の政策や制度など、個人や社会のありように関して、規範的に考察する学問分野である。正義論はその考察対象として、「今ある」社会よりも「あるべき」社会を探求する。そこで、人口問題について正義を論じるとは、あるべき人口規模、あるべき人口政策といった規範的問いに中心的に取り組むということである。本章第一節で概観するように、人口論は過去から現在まで、すぐれて正義の問題でもあり続けてきた。

とはいえ、正義論の一テーマとして、人口問題が独立した位置を占めてきたわけでは必ずしもない。むしろ、多くの研究者がそれを重要なテーマと捉え、研究を重ねてきたにもかかわらず、これまで「人口正義論」としてその体系的な知の蓄積はなされていないのが現状である。その結果、人口問題についての考察はこれまで、環境倫理学、生命医療倫理学、グローバル正義論、世代間正義論といった各テーマの一部分として、倫理学者、法哲学者、政治哲学者らによって、同時並行的に進められてきた。

こうした問題意識のもと、私たちは各テーマ、各領域を横断する新たな学際的領域を切り開くような、国内の知の蓄積を結集する編著を企画した。本書の刊行により、正義論研究者にとっても、同様に人口問題に関心を抱く他分野の研究者や一般の読者にとっても、「人口正義論」に関する最良の知の手引きができるものと信じている
序 章 人口問題の正義論――研究動向の道案内  松元 雅和

第I部 人口問題の哲学的基礎
 第1章 いとわしさと嗜虐のあいだ――「正負場合分け功利主義」の挑戦  鈴木 真
 第2章 充分主義の検討――人口倫理学の観点から  井上 彰

第II部 人口規模の問題
 第3章 人口問題と功利主義――最適人口規模と世代間評価への拡張  釜賀 浩平
 第4章 人口抑制の道徳的是非  松元 雅和

第III部 生殖と家族計画の問題
 第5章 子どもをもつ権利――生殖とリベラルな社会の接続を考えるために  野崎 亜紀子
 第6章 生殖の正義と人口問題  鶴田 尚美

第IV部 人口移動の問題
 第7章 人の移動と国境管理――参入、離脱、受容可能性  福原 正人
 第8章 人口減少時代への対応としての外国人家事労働者の受け入れ
     ――相互行為と構造という二つの観点からの規範的考察  岸見 太一

第V部 世代間正義の問題
 第9章 人口問題における世代間公正  宇佐美 誠
 第10章 互恵性は世代間正義の問題を解決するか?  森村 進

あとがき  井上 彰

引用・参考文献
索引

シェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加

同じジャンルの商品