大学進学志向のOLS重回帰分析――『基礎ゼミ 社会学〔第2版〕』サポート資料

大学進学志向のOLS重回帰分析の結果(SSP2022調査) 
  相関係数(r)    回帰係数(B)    標準化偏回帰係数(β)   
 (定数)     0.716      
年齢 -0.090 ** -0.004 -0.046
性別(女性ダミー) -0.084 ** -0.084 -0.044
教育年数 0.291 ** 0.102** ** 0.242 **
職業威信スコア 0.162 ** 0.004 0.047
世帯収入(対数等価所得) 0.156 ** 0.096** ** 0.071 **
  n=1601   Adj. R2=0.094**  
**は1%、*は5%、†は10%水準で有意な値

 OLS重回帰分析は、調査計量でもっとも一般的に用いられている多変量解析法である。ここではすべて同じ単位に標準化した数値を見ていく。
 
 この操作を行っている相関係数(r)と標準化偏回帰係数(β)は±1.00で関係が最も強く、関係が全くない場合は0.00となる。マイナスの値は一方の変数の値が高いともう一方の値が低いという関係を意味する。回帰係数(B)は、回帰式上で示される推定値であり重要だが、その大きさは変数の分布に依存するので読み解きが難しい場合がある。

 表の左列の相関係数(r)は、因果関係を考える前の見かけ上の関係を示しており、社会経済的地位が高いほど、そして若年であり、男性である(女性ではない)ほど、大学進学志向が強い傾向を確認できる。

 しかし、5つの変数の重なりを考慮して推計した標準化回帰係数(β)をみると、教育年数の効果だけが大きく(β=0.242)、その他は有意であるものの値が小さく(0.00に近く)直接の影響力が大きくないことがわかる。これらの変数が示している相関係数には、学歴と職業的地位、経済力、性別、年齢との関係によって表れている疑似相関の部分が大きいといえる。

 記号(**/*/†)で表示している有意性は、数値がゼロである、すなわち変数間に関係性がないという仮説が成り立つ確率を示している。社会学では通常は5%と1%を仮説の棄却(関係性がないということを否定する)のための水準としてみる。この分析の場合は、教育年数の回帰係数は1%水準で有意、すなわち因果関係がある(正確には、ないとはいえない)ことを意味している。なお、有意性は値の確からしさを示すもので、関係性の大きさではない。

 この分析では説明される側の変数として大学進学志向が置かれており、これに対して影響力をもつ重なり合った要因として5つの変数が投入されている。投入した5つの変数の値が大学進学志向の値をどれだけ予測する力をもっているかを示すものとして、モデル予測値と実測値のズレを計算した調整済み決定係数はR2=0.094であり、この因果モデルにはおよそ10%の予測力があるといえる。SSP2022調査のような対象者層が広い社会調査データの意識項目では、一般にこの値はあまり高くなることはなく、この数字は適切な予測ができていることを示している。

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